以前、ゆるやかな居場所の必要性について書きました。今回はその続編です。
自宅でもない、職場や学校でもない、「第三の居場所」があるとなにかと有用であるという事例が複数あるとしました。一方で、人口減少が続いている和歌山ではどのように居場所を作っていくかは課題になりそうです。
まず、とにかく人がいない。特に日中に家にいる現役世代が格段に減っています。小中学生をもつ保護者世代は共働きが当たり前。昨年度、和歌山県がおこなった小学5年生・中学2年生などを対象にした調査によると、小5児童の母親が専業主婦である割合は約15%、中2生徒ではなんと約10%。5年前の同じ調査よりもさらに少なくなっています。そりゃPTAも「なり手がいない」問題が出るわけです。
また、産業の多様化、特に第3次産業従事者が増えたため、土日祝日が仕事という方が格段に増加しているというのも地味に効いていそうです(かくいうわたしもそうなのですが)。
和歌山でも人口のボリュームゾーンは団塊世代になるのですが、もう70代半ばで心身の不調が目立ってくる世代。居場所運営を担うよりは利用する側の立場になりそうです。
70代半ばというところで思い出したのですが、ある地域包括支援センターの方によると、「年配の方が集える居場所づくりを進めていた介護事業者も多いのですが、昨今の介護業界の深刻な人材不足で居場所事業を取りやめざるを得なくなったところが多い」とのことでした。どうやら「事業に付随する形での居場所」は相当厳しい運営になっていそうです。
となると、営利を追求しない形で開設される居場所が求められる、ということにはなりそうです。その非営利の居場所…と思うと、現在でいうと「子ども食堂」などが核になった場所が望ましい、ということになるでしょうか。
和歌山県は先日「こども食堂応援ネットワーク」を立ち上げましたが、ここでいう「子ども食堂」はなにも子どもだけを対象とするのではなく、地域のどんな人でも利用が可能な「地域食堂」として、地域のコミュニティを紡ぎなおすことが期待されています。先日のネットワーク設立シンポジウムでは「高齢の方でも来てもらえる場所に」なんていう声もありました。食事は生きるうえでは欠かせない行為。そしてみんなで食べるとおいしいし楽しい。こういう居場所はしっくりくるのかもしれませんね。
一方、地理的・物理的要因で「居場所」に行けないという方もいらっしゃるはず。このこども食堂応援ネットワークの設立シンポでは「交通手段がない高齢者の移動手段も整備してほしい」という意見も出ていました。乗り合わせなどで出向くという手段もありますが、運営者側から出向いていくアウトリーチ型もあってもいいかもしれません。例えば上富田町で展開されている熊野高校の「Kumanoサポーターズリーダー部」の部員のみなさんが独居高齢者を中心に訪問をされているケースなどがあります。
アウトリーチとなると、1対1もしくは2対1とかになるので「居場所」といえるのかどうかという議論はありますが、第三者と話すことができるという意味では居場所同等の効果が期待できるとわたしは考えています。少なくともサポーターズリーダー部のみなさんの活動を取材させていただいた限りでは、高齢者の方にとってもいい効果が出ているようです。
いやいや、最近はメタバースなんていう言葉がはやっているし、若い人であればオンラインでもいいんじゃないかという話もあったりします。前回取り上げた「長距離通学を要因の一つとする不登校・ひきこもり実態調査報告」でも少し紹介されていますが、地域を気にせず参加できるオンラインの居場所の可能性に言及している団体もあったんですよね。これなら、近所の居場所との相性が悪かったとしても別の居場所に…ということも比較的簡単かもしれません。
なんだかんだと、うまく資源を組み合わせて「第三の居場所」の構築、普及につなげていきたいと思っている今日この頃です。