わかやまNPOセンターでは昨年度、かつらぎ町を拠点に活動するNPO法人よりみちが日本財団からの助成を受けて実施した、「取り残された不登校児・その保護者を支える調査と居場所開催」事業のお手伝いをさせていただきました。この一環で実施した「長距離通学を要因の一つとする不登校・ひきこもり実態調査報告」の報告書が日本財団のウェブサイトからダウンロードできるようになっています。
「遠距離通学がきっかけに子どもが不登校になったのでは」という保護者の方の声をきっかけに、全県調査をしてみようということで企画された調査で、結果の概略はわかつく第335号に掲載しています。この調査のなかでは、県外の子ども支援団体から「人口が少ないと、居場所や相談先の選択肢が限られる」という課題が提起されています。
このような話はなにも不登校児・生徒の居場所やフリースクールだけではなく、あらゆる分野で聞かれます。乳幼児を持つ保護者も、専業主婦や職業などの関係で第三者との接点が少ないという方も、仕事を勤め上げたあと特に地域との関わりがないという方も、なんなら仕事に追われて自宅と職場の往復に終わっているという方も、みんな同じ課題を抱えている、かもしれません。
わたしが最近例に出すのは「第三の居場所」という考え方です。よく言われるのはアメリカの社会学者・オルデンバーグが提唱した「サードプレイス」、つまり自宅などの「第一の居場所」(生活の拠点)、学校や職場などの「第二の居場所」(社会的な居場所、義務や必要性が発生)に加え、「第三の居場所」があると人生が豊かになるという考え方です。
オルデンバーグの「第三の居場所」の定義は、(1)中立な場所、(2)平等な場所、(3)会話が重視される、(4)近づきやすく親しみのある場所、(5)規則的な場所、(6)目立たない場所にある、(7)陽気な雰囲気がある、(8)家から遠くない、の8つの条件を満たし、家庭や職場などの義務から解放され、一個人としてくつろげる場、とされています。
1980年代のアメリカ社会の課題に紐づけた考え方のようですので、いまの日本でこのような場所を想像するに、上記の8つの条件をすべて満たすところってあるかなぁ、とは思いますが、確かに自宅と職場以外に居場所があるというのはよさげな感じがします。
例えば、NPO法人二枚目の名刺さんは職業を持っている方に社会に対して役立つ活動「パラレルキャリア」を推奨しています。認定NPO法人サービスグラントさんは自身の持つ専門性を活かしたボランティア「プロボノ」を推進されています(ちなみに現在のわかやまNPOセンターのウェブサイトはサービスグラントのプロボノのみなさんの多大なるご協力により構築されている、和歌山県内第1号案件でもあります)。
こうした事業に参加されている方にうかがうと、普段の会社員などとはまったく異なる経験をさせてもらって視野が広がった、とか、社会的に必要な取り組みにもっと参画したいと思った、とか、なかには自分の会社の事業としてなにか手伝えることがないか考えたいとか、なかなかいい手ごたえをつかんでらっしゃる方が多いようです。
一方、日本財団は「子ども第三の居場所」として、生活的な困難に直面している子どもなどを対象に、生活習慣や学習習慣を身につけてもらうための、学校でも自宅でもない「第三の居場所」の運営を支援しており、利用している子どもに好影響が示唆されているという調査結果を発表しています。
・・・というように、家庭でも会社・学校でもない居場所があると、生活になかなかいい影響がありそうな感じがいたします。ここ最近お話をさせていただいた方も、おじゃまさせていただいた住民ワークショップの参加者の方も「(第三者に)自分の想いを聞いてもらってほっとした」「周囲にこんな活動をしている方がいることを知って元気をもらえた」「こんな取り組みがあると知って新鮮に感じた」などと話されていました。
こうした「第三の居場所」の有用性はあちこちで指摘されるようになっています。一方で、人口減少にあえぐ和歌山においてそのような場をどう作っていくかは大きな課題ともいえます。それはまた別の機会に。