
和歌山県は南海トラフ地震の脅威にさらされています。地震が起きるとどれだけの揺れがあって、どれだけの津波が何分後に来るという予測も出ています。ただ、予測はあくまで予測。予測が外れることもあります。また、予測として公表されているのは最大・最短の数値であり、当該自治体の全域でその数値が記録されるわけではないことがあまり伝わっていない感があります。
南海トラフ地震の揺れは大きく2つの想定があります。まず、100~150年に1回程度の間隔で発生している大地震で、前回は1944年・1946年の昭和南海・昭和東南海地震とされています。ここから80年以上が経過しているため、そろそろ次の大地震が起きる頃合いだ、というわけです。もうひとつは、1000年に1回程度とされる巨大地震です。
そして震度や津波の想定はその2つの想定ごとに発表されています。
どちらに備えるのか、ということになると、確率論でいうと100~150年に1回発生している地震への備えが優先されるべきということになろうかと思います。100~150年に1回のレベルの地震に対して適切な備えをすることで、人的被害を相当減らすことが期待されています。「1000年に1回の巨大地震」は南海トラフの構造上、考えうる最大の規模ではありますが、私たちが生きている間に実際に発生するのかどうかもわからない、というものです。
この予測については「わかつく」でもご紹介していますが、公表されているのは自治体ごとの最大・最短の数値でしかないことに注意が必要です。
巨大地震では串本町に高さ1mの津波が最短1分で到達すると予測されていますが、これは紀伊大島東端の数値であり、串本町中心部の海抜の低いエリアへの到達には5分程度かかるとされています。
また、すさみ町では高さ1mの津波が最短3分で到達すると予測されていますが、これもすさみ町沖にある小島の数値で、その対岸にある見老津地区の集落に高さ1mの津波が到達するまでは6分かかることから、この間に最大限の避難行動をしようという取り組みが進められているようです(参考:NHK大阪放送局の記事)。
比較的厳しい条件に基づいて計算はされていますが、実際に起こる揺れが想定よりも強くなったり弱くなったり、また揺れの周期や断層のずれ方など、様々な条件は想定通りにいくとは限りません。地震の大きさや津波の想定が公表されている数値よりも悪化することだって、逆にこの数値に遠く及ばない可能性だってあるわけです。
南海トラフに関しては一定間隔で大きな地震が発生しているのである程度メカニズムはわかっていますが、南海トラフ以外の断層がずれることだってあり得るわけです。和歌山県は和泉山脈沿いに中央構造線が通っており、国の地震予測でも、この断層が動く確率は国内の他の断層に比べては相対的に高くなっています。そして、中央構造線以外に地震の想定がなかった断層がずれる可能性だってあるわけです。ここ10年以内でみても、熊本地震や胆振東部地震など、それまではあまり地震が想定されていなかった断層が動いた大地震も実際にあります。
そして、地震ばかりに目を向けていると、土砂災害や水害のリスクが置き去りにされてしまう可能性もあります。比較的水害は少なめの印象がある和歌山県ですが、2011年の紀伊半島大水害、2023年の線状降水帯による大雨被害など、時折大きな被害が出る水害は発生しています。
和歌山市内だけでみても、局地的な浸水・冠水は年に1回程度は聞くような気がします。
「地震や津波が怖いね」だけではなく、水害・土砂災害なども含めた防災への備えが必要になるということを出水期を前に改めて確認しておきたいところです。水害や土砂災害については、その多くがハザードマップに記載のあるところで発生しているという研究もあります。まずは、ご自身のお住まいや職場・通学先などのハザードマップを確認いただければと思うばかりです。
国土交通省の「重ねるハザードマップ」が様々な災害リスクを同じ画面で確認できるのでお勧めです。
