
NPO法が施行されて26年半。全国5万を超えたNPO法人ですが、一般社団法人の台頭やNPO法人の解散増加などもあり、すでに5万を割り込んでいます。和歌山県内は幸い新規設立数と解散数がほぼ同じ水準で推移しているため、NPO法人の総数としてはあまり変わっていません。とはいえ、和歌山県内でもNPO法人を解散したいというご相談自体はそこそこある、ということは事実です。
さて、NPO法人は法律により、解散事由が定められています。
(1)総会での決議(NPO法第31条1項1号)
(2)目的とする特定非営利活動にかかる事業の成功の不能(NPO法第31条1項3号)
(3)社員の欠亡(NPO法第31条1項4号)
(4)合併(NPO法第31条1項5号)
(5)破産手続開始の決定(NPO法第31条1項6号)
(6)所轄庁による認証の取り消し(NPO法第31条1項7号)
(7)定款に定めた解散事由の発生(NPO法第31条1項2号)
このうち(7)を設定しているNPO法人はわたしは見たことがありません。また、内閣府の集計でも、全国のNPO法人の解散の理由は(1)が圧倒的に多く、ついで(6)がそこそこあり、(5)が少数ある、というような感じです。
(2)はその事実を客観的に証明する資料をもとに所轄庁が認定するのですが、わたしが聞いた想定例としては「ある絶滅危惧種Aの保全を通じて地域の環境保全に取り組んでいたがAが絶滅したことが確認されたため、その目的の達成ができなくなった」のように、明らかに活動する意味がなくなった、とわかること、だそうで、かなりハードルが高いとされています。
(3)社員の欠亡は、社員(正会員)が0人になったことを指しますが、誰がそれを確認するのか、実務上は非常に困難です。社員が0人になるような団体であれば、先に(6)が適用されそうです。
(4)合併は意外にありそう…と思いきや、和歌山県内では事例は1件もありません。合併の手続きは、1つ新しいNPO法人を立ち上げるのと同じくらいの実務が必要になるので、それなら法人Bを(1)の要件で解散し、残余財産を事業とともに法人Aに譲渡する形で事実上合併に近い形をとる、という手続きのほうが簡単だったりします。
NPO法人の新規設立よりも解散のほうが手間、ということをあまりご存じない団体も少なくありません。もっとも、法人設立時に解散のことを考えることはほとんどないとは思うのですが…(わたしもそうでした)。新規設立がきわめて安価に進められるのとは逆に、解散は数万円の費用と2カ月以上の期間がかかるのです。
NPO法人の解散の大まかな流れについては「わかやまNPO広場」でもご案内していますが、NPO法人の解散時には民法の規定の適用も受けることから、解散についての公告をおこない、2か月間以上は債権者からの連絡を待つ必要があります。また、公告には文字数により3~4万円程度の費用がかかります。
なにより、解散した際には法務局での解散と清算人の登記が必要ですが、理事の登記が適切に行われていないことを理由に登記でつまづくケースがあるようです。当方でも和歌山県NPO情報紙「わか愛愛」を県内NPO法人に送付する際に、役員任期が到達するたびに所轄庁への役員変更届出と法務局での役員変更登記が必要と毎年お伝えしているのですが、NPO法人の解散を検討するということは法人運営になんらかの行き詰まりが発生しているケースが少なくなく、役員変更登記がきちんとおこなわれていないことも少なくありません。
このような状態で、解散を決議して法務局に登記をしに行くと「役員変更登記が長らくなされていないので、登記上は役員がいないことになっているのですが…(なので登記ができない)」と指摘されることもあるようです。いくら定款に「任期が到達しても後任の役員が選任されていない場合は、前任者が引き続き職務にあたる」と記載されていても、何年も役員登記を怠っていると、役員が選任できていない=総会が定款通り開催されていない=法人運営自体が定款通りできていない、とみなされてしまいます。
ある専門家の方のブログによると、法律や定款を厳密に解釈すると、NPO法人の役員任期は、いくら総会での手続きが済んでいないからといっても1期あたり4年を超えられないと考えられるそうです(行政官庁の解釈ではありませんが…)。
「え、うちの法人、ずっと役員が再任し続けられてきたので変更登記していないんだけど」というケースもまれに聞きますが、これも毎年お伝えしていますが、役員全員再任であっても役員変更届出と役員変更登記は必要です。
役員登記が滞っているとなると、本則としては役員変更登記をさかのぼっておこなうことが求められます…が、過去の役員選任に関する書類(議事録や互選書など)がきちんと残されているかどうかも微妙なところ。そうなると、役員登記懈怠(けたい=怠ること)として組合等登記令違反の過料事件扱いとなることだってあります。このような状態になると、もはや司法書士等の専門家の出番になるかもしれません。過料になったとしても、専門家に依頼することになっても、どちらにせよ費用負担が発生します。
NPO法人の解散は意外に面倒だ、ということを覚えていただき、毎年の所轄庁への手続き、少なくとも2年に1回は発生する法務局での役員変更登記は怠らないようになさってください。