行政機関は各々「長期総合計画(長計)」というものを策定します。一般的に、長計は当該自治体の10年程度先を見据えて策定する、その自治体の最上位に位置する計画です。この長計にひもづく形で、福祉や都市計画など個別分野の計画がつくられるため、本当に重要な計画です。
現在、和歌山県は2040年ごろを見据えることを前提に、新しい長計の策定に向けた準備を進めていますが、先日、検討状況の中間報告が発表されました。これまでも長計などを策定されるときには県民の意見を反映させるための工夫はあったのですが、今回の新長計の策定については、「熟議」と題して県幹部と県民のみなさんの対話の場が設定されたり、将来像を絵画や作文などで展望してもらう取り組みが実施されたり、と様々な県民参加の仕組みが設けられているのが大きな特徴です。
さて、この中間報告(PDF)をみてみたのですが、人口減少、高齢化の進展を背景に、かなり将来が厳しいということを包み隠さず取り上げているのが目を引きました。
例えば…
2040年頃に向かっては、人口減少・超高齢化に伴う人口構造の変化が大きく進行し、支え手・担い手の減少等の資源制約の深刻化や、更新時期が到来するインフラが増加するなど、地域社会の持続可能性に関する様々な課題が顕在化することが予測されることから、地方行政の在り方もこうした変化・リスクに適応したものへと大きく転換していく必要があります。(PDF 6ページ)
この人口急降下とも言うべき状況が、今後、和歌山の教育、産業、医療・福祉、防災などの領域において、一体どのような重大な事態を引き起こすかを、私達はリアリティをもって正確に理解するとともに、その意識を共有し、一丸となって早急に対処しなければ、果てしない縮小と撤退を強いられ、個人の生き方も選択の幅が極端に狭められる、より深刻な事態に陥る恐れがあります。(PDF 9ページ)
・・・のような感じです。要はこのままじゃ和歌山はどんどん不便になりますよ、今のうちにいろいろ考えないといけませんよ、ということを県の最上位計画策定の前提に据えているわけです。これまでもこのようなことを含んだ検討はされていたと思いますが、相当危機感がにじみ出ている表現になっています。
上記のようなことは、わかやまNPOセンターとしても「わかつく」紙面などを通じて数年前から繰り返し取り上げたことも含まれていることから、その内容自体には驚きはありません。ただ、これを行政機関が公に発表した、ということは正直驚きました。
県庁もそうですが、市町村も人手不足が深刻です。この中間報告では、市町村の役割にも言及し、人口減少下の地域社会のあり方にも触れています。地域を構成するあらゆる主体が地域づくりの担い手に、という趣旨の文章もみられます。NPO・ボランティア団体等と行政・企業との連携・協働を進めてうんぬん、というNPO中間支援組織の役割が本当に重要になってくるのではないかと思います。
今後もこの長計の動きは確認していきます。