
NPO法人の制度が始まったのが1998年。2000年代に大きく数を伸ばしましたが、それから20年以上が経過し、解散が増えるようになってきました。一般社団法人の設立は相変わらず好調なこともあり、NPO法人の総数は漸減傾向にあります。
そんななか「理事長と副理事長が亡くなられており、NPO法人の解散手続きができない事例がある」という話を聞きました。
NPO法人が解散するには総会の決議が一般的です。しかし、総会を招集するべき理事長がいらっしゃらない。理事長が欠けたときに業務を代理する副理事長もいらっしゃらない。ご家族も本人がNPO法人の理事をしているという話を聞いていなかったようで、状況を理解いただけていないようです。しかも他の理事は「自分は理事になった記憶がないし、関係ない」と話しているといいます。NPO法人の役員になるには就任承諾書への署名と、住民票の提出が必要なので、当該理事の方もその手続きをされているはずなのですが、「名義貸し理事」だったのか、本当に失念されているのか…。
NPO法人が機能不全に陥り、事業報告書等の提出などができていない場合は、所轄庁から過料処分通知がいくことになるのですが、理事長が亡くなられているということは過料事件通知の対象者がいない状態です。所轄庁が認証取り消しをおこなおうにも、認証取り消しを通知する相手がいない状態です、たぶん。こういう事案が発生することはおそらくNPO法は想定していないはず(民法の解釈でなにか方策が導き出せるかもしれませんが)。
上記のような状態ですので、おそらく法務局での役員変更登記も正常には行われていない可能性が極めて高く、法務局が登記懈怠による過料事件通知をおこなおうにも相手先がいないということになると思われます。
こうした場合、所轄庁は仮理事を選任し、その仮理事が解散手続きをすることになるというのが本筋なのかもしれませんが、法律上は「理事が欠けたことで損害が発生する恐れがある場合」に、「所轄庁」が「利害関係者からの請求もしくは所轄庁の職権で」仮理事を選任する、とあります。今回の場合、話を聞く限りは運営が放置されているだけで誰も損害を被っているわけではなく、利害関係者からの請求もあるとは思えません。この場合、所轄庁は誰に仮理事をお願いすればいいのか、法律の解釈を考えただけで頭が痛くなりそうな気もします。
前述の団体の場合、所轄庁は監事の方には連絡を取ることができているようで、監事の職権で総会を招集し、解散を決議いただくよう依頼するつもりのようです。厳密にいえば、監事もNPO法人の運営をチェックする立場にいるはずなので、監事の職務を十分には果たされていなかったことにはなるのですが、ここまできたらそうも言っていられません。
今後このようなことが増える可能性もありますが、そもそも所轄庁が仮理事選任のような手続きをおこなうだけの余裕に乏しいのも事実。所轄庁の業務が回らないからと、他のNPO法人関係の業務に支障が出たり、NPO法の運用に影響が及ぶようなことはあってはならないのですが、出てきてしまいそうなのが怖いところ。
でも、本当に怖いのは一般社団法人ではないかと思っています。2008年以前の主務官庁の認可により設立されていた法人は、認可に必要な様々な手続きを踏んでいますので、ある程度組織運営基盤が確立されていると思われます。一方、2008年施行の新公益法人制度のもとで誕生した一般社団法人は今やNPO法人を上回る数になっていますが、NPO法人のような所轄庁があるわけではありません。法人ですからもちろん定款などはありますが、法人以外の第三者が運営状況を確認する手段は法的にはありませんし、NPO法人のような支援センターが各地にあるわけでもありません、
一般社団法人は、一定期間以上なにも登記が行われていない場合は法務局の職権による法人格抹消の手続きが始まっているようですが、今後、登記懈怠があまりに多くなるようでしたらなんらかの法規制がかかる可能性も考えられなくはありません。パンドラの箱にならなければいいのですが…
