
最近、動画サイトの「おすすめ」に出てきたことをきっかけに、長期間ひきこもり状態だった方がインターネット掲示板で閲覧者と繰り広げたやりとりをまとめた動画をいくつか見ました。結果としていい方向に進んだ話、逆に悪い方向に向かった話、様々です。
※ 人権を無視したような辛辣なやりとりも少なくありません。この記事をご覧になっている方に積極的に閲覧することはお勧めしません…。
ただ、なぜそのような動画に興味をもったのか、といいますと高齢家族がずっとひきこもりの子どもを支えている「8050問題」が和歌山でも珍しい事象ではなくなっている、という事実を知ったから、なのです。ご高齢の家族が体調を崩したということで保健師さんが家に出向いたところ、その子どもが長期間ひきこもり状態となっていたことが初めてわかった、というような事例が農村部でもちらほらある、とひきこもり支援に携わる方から聞きます。
わたし自身はひきこもりの方の支援活動を直接おこなっているわけではありませんので、そういった境遇にある方がなぜそのような事態に陥ったのか、なにか共通項のようなものはないのか、というようなことを直接知る由はなく、なにか手掛かりが得られるのかもしれないと思って、いくつか動画を見るようになったのです。
動画に出てくる当事者のひきこもりのきっかけは様々です。いったん企業に就職したもの、人間関係の問題やハラスメント、いわゆるブラック企業で激務で身体を壊した、就職先が自分の本意ではなかった、家族の介護に手を取られるようになった(ヤングケアラーも入るかもしれませんね)、などといった事情で離職し、そこから再就職せず、または再就職ができず、ひきこもり生活に入ったという方が多いように見受けられます。
そして、ひきこもり状態から抜け出せないのは「人間関係で失敗したので再びそうならないか心配している」「また同じことになったらどうしよう」という漠然な不安を解消できないというのが多くの共通項なのかなというのが現時点の見立てです。
掲示板でのやり取りを通じて、また周囲の環境の変化を通じて自分を取り戻し、事態を好転させるきっかけをつかんだ当事者も少なくない一方、「こうなったのは社会が悪いからだ」「自分は何もするつもりはない」と何もかも他者に責任を押し付け、自分を正当化させる言動を繰り返す当事者もいますが、こうした場合は得てしてさらに事態を悪化させる方向に転ぶケースが多いようです。
時に辛辣な言葉を投げかける掲示板閲覧者とてそこまで鬼ということではなく、ひきこもりとなった最初のきっかけが疾病だったり、災害や家族、会社側の事情など、やむを得ない事情の場合は同情的で応援の声も多く、なんとか当事者に前を向いてほしいという気持ちが伝わってきます。また、前を向いて頑張ろうとする当事者に対しては心が温まりそうな言葉が多数かけられ、匿名のやりとりであっても、頑張ろうとする人を応援しようとする気持ちはみていていいなぁと思えます。匿名掲示板にはどうしてもネガティブな印象を抱いてしまうのですが、そこはいい意味で裏切られました。
他責感情に基づく発言が多い当事者をみても、その多くは「自分は何も考えずに単純に生きていきたいのに、社会に出るとあれもこれも考えないといけないのがしんどい」という感情を持っているようで、(前段は無責任とも受け取られかねませんが)社会のマルチタスク化についていけないという想いが感じられます。閲覧者から辛辣な言葉で「その考えはおかしい」「ますます社会についていけなくなるぞ」という趣旨のことを指摘されても、そこは揺るがないようです(そしてより事態を悪化させてしまうのですが…)。当事者の書き込みの内容から、そのようなことがくみとれます。
某人気番組のキャッチフレーズに「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ」なんて言葉がありますが、社会に出るとあれもこれも求められることに対してしんどさを感じている方にはどのようなアプローチが有効なんでしょうか。ひと昔まえならそこまで求められはしなかったよなぁとか思うわけです。パソコンやインターネットがなかったときはもっとみなさんゆったりと仕事していたように思います。
その時がすばらしかったとかそういうのではなく、社会が変わっていて、多様な働き方ができるようになった現代、ついていけなければドロップアウトしか道がないのか、というとそれはなんだか違うよなぁと。なんかいい方法はないものでしょうか。
