
時折、和歌山にいることのむずがゆさみたいなものを感じることがあります。
よく、NPO(本稿ではボランティア団体を含む広義のNPOとします)は、行政や企業では手の届かない範囲をカバーするセーフティネットの役割を担うことが期待されている、といわれます。社会の進歩とともに住民ニースは多様化・複雑化しており、法律や条令などに基づく行政施策では恩恵を受けられない方がいらっしゃる可能性があります。また、経済活動を前提とする企業の施策ではカバーできない方がいらっしゃる可能性があります。NPOは非営利で、企業ほどの利潤を追求しない組織体ゆえ、行政や企業の施策からこぼれ落ちるニーズへの対応が期待されているというのが教科書的なお話です。
それはNPOで働く身からするとよくわかります。いま急速に拡大している「こども食堂・地域食堂」はその最たるものですよね。もちろん、こども食堂や地域食堂のような存在を必要としない地域社会が望ましいのはいうまでもありませんが、現実問題、子どもだけで食事をとらざるを得ない世帯が少なくなく、地域内のつながりも薄れてきているわけで、地域の紡ぎ直しとしての「こども食堂・地域食堂」は有力な取り組みのひとつだと思います。
そんな当方には様々な相談が寄せられます。NPO支援を生業にしているわたしたちですが、いち個人の方からの相談も少なくありません。NPOは非営利組織全般を指す言葉ですが、NPOに相談すればなんでも解決してくれるんではないかという誤解にも似た期待をお持ちの方もいらっしゃるようです。NPOにも様々な分野があるんですけれども…。
わたしたちがもつ情報を駆使して、できるだけ近い取り組みをおこなっているNPOをご紹介したり、時には行政機関をご紹介することもあります。「あ、そこにはすでに相談したんです」といわれることもあれば「え、そんなところがあるんですか」といわれることもあり、がっかりしたり、おつなぎできたとうれしかったりします。
…が、わたしたちの持っている情報では「どもならん」相談もごくまれにあります。具体的な内容は伏せますが、結論「東京や大阪ならそんな悩みを持つ方を支援してくれる団体があるのに」ということが多いでしょうか。
仮に同じ悩みを持つ方が全国に0.01%いらっしゃるとしましょう。和歌山県民の0.01%だと80人あまりですが、全国なら1.2万人、東京なら1200人、大阪周辺なら800人くらい、同じ悩みを持つ方がいらっしゃる計算になりますよね。数十人なら事業にならなくても数百人いれば事業になりえるんですよね。
つまるところ、セーフティネットの網の目は行政・企業・NPO等の活動の成果もあって少しずつ狭くはなっているんだけれども、それでも網の目をすり抜けてしまう課題は存在しうる。そして、絶対的な規模が小さい地方では、その課題を見過ごすしかなくなってしまう実態があるわけです。わたしたちも無尽蔵に費消できるお金があれば解決可能かもしれませんが、現実的にそんなことはないわけで。
ITの力で都会と地方との格差は縮まったとされます。仕事のなかにはITの力でどこにいても同じことができるものも少なくありません。上記のようなケースでも、ITを活用してつながることもありえます。しかし「人の多さ」「お金の集まりやすさ」など絶対的な差があるなか、特に直接相対しなければならない場合ほど、「どもならん」課題が「どもできん」課題として置き去りにされてしまうことがある、という現実をつきつけられます。
こんなときに、あのネコ型ロボットが、あの星が入った7つの玉が、この世に存在しうるのならばと思うのです。
