わかつく344号に掲載した和歌山市の公共交通空白地域の地図を拡大してみました。四角は1km四方の格子で、赤色が濃くなるほどその格子内の人口が多いことを示します。青い斜線は鉄道駅から1km、バス停から500m圏を示したものです。青い斜線から外れ、かつ赤色が濃いところは特に公共交通が不便と考えられる地域を示します。
これをみると、阪和道の和歌山IC西方、地名でいうと松島、新在家、加納、太田、秋月といった付近が青い斜線から外れ、かつ比較的濃い赤色がついており、比較的ボリュームの大きい公共交通空白地域と考えられます。六十谷付近や木ノ本付近にも青斜線から外れた地域がありますが、こちらは昨年秋から和歌山市地域バスが運行されるようになり、現在は公共交通空白地域からかなりの部分が外れています。また、松島・加納あたりではかつて和歌山市地域バスの実証運行があり、JR和歌山駅・南海和歌山市駅にも行ける路線設定だったものの、不調に終わっています。
一方、ここ10年ほどの間に路線バスが廃止された御膳松、島橋、安原のあたりは赤色が薄くなっていることがうかがえます。いま路線バス廃止の議論が起こっている雑賀崎や紀伊風土記の丘の周辺、六十谷駅-紀伊駅間なども人口はさほど多くないようにみえ、人口の減少により乗客が減ったのかな…ということが想像できます。
鉄道やバス路線の廃止となると反対の声がよく挙がりますが、それは裏返すと、民営の交通事業者に赤字を垂れ流すことを強いることになるわけで、それはそれでどうか、という話になってしまいます。「廃止あるある」で、鉄道やバス路線の廃止に関する説明会や存続を求める集会の参加者がみんな自家用車で会場に集まっていたなんて話は全国各地で聞きます。和歌山市内も過去の同様事例でみられた・聞かれた話でもあります。
以前、県内で開かれた会議で、バス事業者の幹部の方がおっしゃっていた話が印象的でした。
「よく、自家用車が運転できなくなったらバスを利用する(のでバス路線を残してほしい)、という話を聞くが、自家用車が運転できなくなるほど運動機能が落ちると、バス停まで移動するのも困難で実際バスには乗れない方がほとんど」
・・・確かにそうですよね。
移動の自由を訴えるのも大事ですが、その自由を守るのは移動手段を提供している事業者・行政機関だけではなく、わたしたち住民の役割でもある、という認識を改めて持たないといけないのではないかと思います。
将来、交通弱者になる可能性は誰もがもっています。「移動すること」「移動ができること」の意味をもう一度確かめて、できることがないか考えるのも大事かもしれません。わたしたちの次の世代にも引き継がれることですから。
(ご注意)上の地図は、駅やバス停から機械的に円をひいていますので、その駅やバス停の本数、周辺の地形などを加味したものではありません。高齢の方にとってバス停から500mは遠すぎるという意見もよく聞かれますし、坂道や水路などがあるかもしれません。したがって青枠内だからといって必ずしも公共交通機関が便利に使えるとは限りません。